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『 Good morning My dear, 』



ポタ、ポタリ、落ちる雫の音と、ペタ、ペタリと濡れた足音。

「ん~!」

綾染彦は大きく背をそらし腕を伸ばした。
動かさずにいた身体を久々に動かす独特な感覚、
以前は当たり前のように得ていた毎朝の起床よりも少し鈍いそれ。
すみずみまで神経を通していくような。

手足に目をやる。以前となんら変わりない。
自慢のしっぽは今は濡れているが、シャワーでも浴びて乾かせば毛艶も元通りだろう。
今しがた抜け出してきたベッドはミュラー博士の用意したフラスコ、その薬液に漬かっていたわけだが、肌がふやけていることもなければたいして筋肉が凝り固まったり、逆に衰えたりもしていなかった。なんとも不思議だが、そういうものなのだろう。
ずいぶんと長く寝ていた気もするが、いくらも寝ていないような気もする。

「みんなまだ起きてねぇのかな」

おやすみと言って別れた仲間のことを考える。
意識世界で交流できたので久しぶりという気もしないのだが。

「最初はどうなることかと思ったけど身体や島が使えないってだけで通心には問題なかったってのも驚きだな、世の中には不思議がいっぱ~いってかァ?」

「…相変わらず寝起きがいいわね…」

聞きなれたものよりも少し低い声が背後からかかる。

まだ血の巡りが悪いのか、雷花の顔色はあまり良くない。

「そっちは相変わらず寝起きがよろしくないようで」

「これでもかなり気分はいいわよ?」

「そりゃよかった」

ふたりは顔を見合わせて笑う。



「「おはよう」」

 


もうすぐみんな起きてくるだろう。朝は来たのだから。



end.

​サービス終了後に復活を願って書いたもの。

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